「また仕事を辞めてしまった…」「自分は根性がないだけなのか、それとも何か病気なのか…」
短期離職を繰り返してしまい、自分を責め続けているあなた。実は、その背景には心や体の病気が隠れている可能性があります。
この記事では、転職支援を10年以上行ってきた私の経験をもとに、短期離職を繰り返す人に見られる病気の兆候、その見極め方、そして適切な対処法について解説します。同じ悩みを抱えていた方の具体的な事例も交えながら、あなたが次の一歩を踏み出すためのヒントをお伝えします。
読み終わる頃には、「自分を責めるだけでなく、適切な対処をすれば道は開ける」ということが理解できるはずです。
短期離職を繰り返してしまうのは甘えではない
まず最初にお伝えしたいのは、「短期離職を繰り返すのは、必ずしもあなたの性格や甘えが原因ではない」ということです。
私がこれまで転職支援をしてきた中で、短期離職を繰り返していた方の約4割は、何らかの心身の不調を抱えていました。そして、適切な診断と治療を受けることで、その後は安定して働けるようになった方も多くいらっしゃいます。
短期離職を繰り返す背景には、大きく分けて以下の3つのパターンがあります。
環境や職場とのミスマッチ:職種選びの間違い、会社の社風が合わないなど、外的要因によるもの。
自己理解の不足:自分の適性や価値観を理解できておらず、何度も同じような失敗を繰り返すパターン。
心身の病気や特性:うつ病、適応障害、発達障害、不安障害などが背景にあるケース。
この記事では、特に3つ目の「心身の病気や特性」に焦点を当てて解説していきます。もし、あなたが「何度転職しても同じような理由で辞めてしまう」「仕事を始めると必ず体調を崩す」「人間関係でいつもトラブルになる」といった経験をしているなら、病気や特性が関係している可能性があります。
短期離職を繰り返す背景にある可能性のある病気・症状
ここでは、短期離職を繰り返す人によく見られる病気や症状について、具体的に解説します。
うつ病
うつ病は、気分の落ち込みや意欲の低下が続く精神疾患です。仕事のストレスがきっかけで発症することも多く、以下のような症状が見られます。
・朝起きられない、出勤前に吐き気や頭痛がする ・仕事に集中できない、ミスが増える ・「自分はダメな人間だ」という自責の念が強い ・休日も気分が晴れず、何もする気が起きない ・睡眠障害(寝られない、または寝すぎる)
実際のケース:28歳、営業職の男性Aさんは、入社3ヶ月で退職を4回繰り返していました。「最初は頑張れるんですが、1ヶ月くらい経つと朝起きられなくなり、体が重くて動けなくなるんです」と話していました。精神科を受診したところ、うつ病と診断され、休職と治療を経て、現在は安定して働けています。
適応障害
適応障害は、特定のストレス要因に対して心身が適応できず、様々な症状が出る状態です。うつ病と似ていますが、ストレス要因から離れると症状が改善するのが特徴です。
・職場に行くと動悸や吐き気がする ・週末や休暇中は元気だが、仕事のことを考えると不安になる ・特定の上司や同僚と関わると強いストレスを感じる ・新しい環境に慣れるのに時間がかかる
実際のケース:25歳、事務職の女性Bさんは、2年で3社を退職していました。「最初の1ヶ月は大丈夫なんですが、仕事が本格的に始まると、毎朝吐いてしまい出勤できなくなる」という状態でした。心療内科で適応障害と診断され、認知行動療法とストレス対処法を学ぶことで、現在は同じ会社で1年半働けています。
発達障害(ADHD・ASD)
発達障害は、脳の機能的な特性により、日常生活や仕事で困難を抱える状態です。大人になってから診断されるケースも増えています。
ADHD(注意欠如・多動性障害)の特徴: ・ケアレスミスが多い、忘れ物が多い ・マルチタスクが苦手で、優先順位がつけられない ・締め切りを守れない、時間管理が苦手 ・じっと座っていられない、衝動的に行動してしまう
ASD(自閉スペクトラム症)の特徴: ・暗黙のルールや空気を読むのが苦手 ・コミュニケーションで誤解されやすい ・急な予定変更に対応できない ・こだわりが強く、柔軟性に欠ける
実際のケース:32歳、ITエンジニアの男性Cさんは、5年で6社を転職していました。「技術的には問題ないのですが、いつも人間関係でトラブルになり、退職に追い込まれる」という状況でした。発達障害専門のクリニックでASDと診断され、自分の特性を理解した上で、リモートワーク中心の会社に転職。現在は2年以上安定して働けています。
パニック障害・社交不安障害
パニック障害は、突然の強い不安や恐怖に襲われる病気です。社交不安障害は、人前で強い不安を感じる病気です。
・満員電車に乗れない、会議で発言できない ・突然動悸や息苦しさに襲われる ・人と接することに強い恐怖を感じる ・電話応対や来客対応ができない
実際のケース:26歳、販売職の女性Dさんは、1年で4回の短期離職を繰り返していました。「お客様の前に立つと、突然息ができなくなり、倒れそうになる」という症状がありました。心療内科でパニック障害と診断され、薬物療法と認知行動療法を受け、接客の少ない事務職に転職。現在は症状をコントロールしながら働いています。
双極性障害(躁うつ病)
双極性障害は、気分が高揚する「躁状態」と、落ち込む「うつ状態」を繰り返す病気です。
・調子が良い時は寝なくても平気で、仕事もバリバリこなせる ・その後、急に何もできなくなり、欠勤が続く ・気分の波が激しく、安定しない ・衝動的に転職を決めてしまう
双極性障害は見逃されやすい病気ですが、適切な治療で気分の波をコントロールできます。
その他の可能性
上記以外にも、以下のような病気や症状が短期離職の背景にあることがあります:
・慢性疲労症候群:原因不明の強い疲労が続く ・起立性調節障害:朝起きられない、立ちくらみがする ・過敏性腸症候群:ストレスで腹痛や下痢が起こる ・HSP(Highly Sensitive Person):刺激に敏感で疲れやすい特性
これらは病気というより体質や特性に近いものもありますが、仕事を続ける上で大きな障害になることがあります。
病気かどうかを見極めるポイント
「自分が病気なのかどうか分からない」という方は、以下のポイントをチェックしてみてください。
同じパターンで退職を繰り返している
環境や職種を変えても、同じような理由で退職している場合、外的要因ではなく内的要因(病気や特性)の可能性があります。
例えば: ・いつも「人間関係が原因」で辞めている ・必ず「体調不良」で続けられなくなる ・「仕事についていけない」という理由が繰り返される
日常生活にも支障が出ている
仕事だけでなく、プライベートでも以下のような困りごとがある場合、病気の可能性があります:
・休日も気分が晴れない、何もする気が起きない ・友人関係でもトラブルが多い ・生活リズムが崩れている(昼夜逆転など) ・趣味や好きなことも楽しめなくなった
症状が2週間以上続いている
一時的な落ち込みや疲れは誰にでもありますが、以下の症状が2週間以上続く場合は要注意です:
・気分の落ち込み、意欲の低下 ・睡眠障害(寝られない、または寝すぎる) ・食欲の変化(食べられない、または食べすぎる) ・集中力の低下、判断力の低下 ・死にたいと思うことがある
自分でコントロールできない
「頑張ろうと思っても体が動かない」「やめようと思ってもやめられない」など、自分の意志でコントロールできない症状がある場合、病気の可能性が高いです。
周囲から心配されている
家族や友人から「最近おかしい」「病院に行ったら?」と言われることが多い場合、客観的に見ても何らかの問題がある可能性があります。
一つでも当てはまるなら、専門家に相談することをおすすめします。
病気が原因で短期離職を繰り返していた人の成功事例
ここでは、実際に病気が原因で短期離職を繰り返していたものの、適切な対処をすることで安定して働けるようになった方の事例をご紹介します。
事例1:うつ病を治療して安定就労に成功したEさん(30歳・男性)
Eさんは大学卒業後、5年間で7社を転職していました。「最初の1ヶ月は頑張れるんですが、だんだん朝起きられなくなり、欠勤が増えて、結局辞めることになる」というパターンを繰り返していました。
転職エージェントの面談で「一度医療機関を受診してみては?」とアドバイスを受け、精神科を受診したところ、うつ病と診断されました。
治療のステップ:
- 3ヶ月間、アルバイトをしながら通院・服薬治療
- 症状が安定してから、残業の少ない事務職に就職
- 主治医と相談しながら、無理のない働き方を継続
- 現在は同じ会社で3年間勤続中
Eさんは「病気だと分かって、むしろ安心しました。自分が弱いせいだと思っていたので」と話していました。
事例2:発達障害(ADHD)の特性を理解して適職に就いたFさん(28歳・女性)
Fさんは4年間で5回の短期離職を繰り返していました。「ケアレスミスが多い」「スケジュール管理ができない」「電話対応で混乱する」などが原因で、どの職場でも「向いていない」と言われ続けていました。
転職相談の中で発達障害の可能性を指摘され、専門クリニックを受診したところ、ADHDと診断されました。
その後の対処:
- ADHDの特性を理解し、苦手なことを明確化
- マルチタスクや電話対応の少ない職種を選択
- クリエイティブな仕事(デザイナー)に転職
- 障害者雇用枠も視野に入れ、理解のある会社を選択
- 現在は同じ会社で2年半勤続中
Fさんは「自分がダメなんじゃなくて、合わない仕事をしていただけだったんだと気づきました」と話していました。
事例3:適応障害を克服したGさん(26歳・男性)
Gさんは新卒で入社した会社を含め、3年で4社を退職していました。「最初は大丈夫なんですが、責任ある仕事を任されると、プレッシャーで吐き気や動悸がして、出勤できなくなる」という状態でした。
心療内科で適応障害と診断され、以下の対処を行いました:
- 認知行動療法でストレス対処法を学ぶ
- 「完璧主義」な思考パターンを修正
- 責任の重すぎない職場を選ぶ
- 上司に自分の特性を伝え、理解を得る
- 現在は同じ会社で1年8ヶ月勤続中
Gさんは「ストレスとの付き合い方を学んだことで、働き続けられるようになりました」と話していました。
これらの事例に共通しているのは、「病気や特性を理解し、適切な対処をした」という点です。自分を責めるのをやめ、客観的に自分の状態を把握することが、安定就労への第一歩なのです。
短期離職を繰り返してしまう時の具体的な対処法
では、短期離職を繰り返している方は、具体的にどう対処すればいいのでしょうか。ステップごとに解説します。
ステップ1:医療機関を受診する
まずは専門家の診断を受けることが重要です。
受診する科: ・精神科、心療内科(うつ病、適応障害、不安障害など) ・発達障害専門クリニック(ADHD、ASDなど) ・総合病院の精神科(身体症状も含めて診てもらいたい場合)
受診のハードルが高い方は: ・まずは自治体の精神保健福祉センターに電話相談 ・企業のEAP(従業員支援プログラム)を利用 ・オンライン診療を検討
診断を受けることで、「自分が弱いせい」という自責から解放され、適切な治療やサポートを受けられるようになります。
ステップ2:治療・リハビリを優先する
診断が出たら、まずは治療を優先しましょう。無理に働き続けると、症状が悪化する可能性があります。
治療の選択肢: ・薬物療法(抗うつ薬、抗不安薬など) ・精神療法(認知行動療法、カウンセリングなど) ・生活習慣の改善(睡眠、食事、運動) ・リワーク(復職支援プログラム)
治療期間は人によって異なりますが、焦らず回復を待つことが大切です。経済的な不安がある場合は、傷病手当金や障害年金などの制度も検討しましょう。
ステップ3:自分の特性を理解する
病気や特性が分かったら、自分の「できること」「できないこと」を明確にしましょう。
例えば: ・ADHD:マルチタスクは苦手だが、好きなことへの集中力は高い ・ASD:臨機応変な対応は苦手だが、ルーティンワークは得意 ・うつ病:朝が弱いが、午後からは動ける
自分の特性を理解することで、向いている仕事、避けるべき仕事が見えてきます。
ステップ4:適切な働き方・職場を選ぶ
病気や特性に合わせた働き方を選ぶことが、長く働き続ける鍵です。
働き方の選択肢: ・一般雇用(病気や特性を伝えるかは任意) ・障害者雇用(オープン就労:配慮を受けやすい) ・フリーランス・在宅ワーク(自分のペースで働ける) ・短時間勤務・パート(負担を軽減)
職場選びのポイント: ・残業が少ない、有給が取りやすい ・リモートワークが可能 ・ストレス要因の少ない職種(例:人間関係が複雑でない、ノルマがない) ・理解のある上司・同僚がいる
転職エージェントを利用する場合は、病気や特性に理解のあるエージェント(障害者雇用専門など)を選ぶと良いでしょう。
ステップ5:働きながらセルフケアを続ける
就職できたら終わりではありません。働きながらセルフケアを続けることが大切です。
継続すべきこと: ・定期的な通院・服薬 ・ストレスのサインに早めに気づく ・上司や産業医に相談できる関係を作る ・無理をしない、完璧を目指さない ・休日はしっかり休む
また、万が一体調を崩した時のために、休職制度や復職支援制度のある会社を選ぶのも一つの方法です。
転職活動で短期離職歴をどう説明するか
短期離職を繰り返している場合、転職活動での説明に悩む方も多いでしょう。ここでは、面接での伝え方について解説します。
正直に病気のことを伝えるべきか
これは状況によります。
伝えたほうが良いケース: ・障害者雇用枠で応募する場合 ・配慮が必要な場合(通院のための早退など) ・病気が完治し、今は問題なく働けることをアピールしたい場合
伝えなくても良いケース: ・病気が完治しており、仕事に影響がない場合 ・一般雇用で、配慮が特に必要ない場合
伝える場合の例: 「以前はうつ病を患っておりましたが、現在は治療を経て完治しております。主治医からも就労に問題ないと診断されており、再発防止のためのセルフケアも学びました。この経験を通じて、自分の限界を知り、無理をしない働き方の重要性を理解しました」
伝えない場合の説明例: 「これまでの転職では、自己分析が不足しており、自分に合わない職種を選んでしまっていました。現在は自己理解を深め、〇〇という職種が自分の強みを活かせると確信しております。長期的に貢献できる環境を探しています」
ポイントは、「過去の反省」と「現在の状態」「今後の意欲」をセットで伝えることです。
短期離職を繰り返す自分を責めないで
最後にお伝えしたいのは、「自分を責めないでほしい」ということです。
短期離職を繰り返してしまうと、「自分はダメな人間だ」「社会不適合者だ」と自己否定してしまいがちです。しかし、それは病気や特性が原因かもしれません。
あなたが弱いのではなく、適切なサポートや環境が整っていなかっただけかもしれません。
実際、適切な診断と治療を受け、自分に合った働き方を見つけることで、多くの人が安定して働けるようになっています。
まずは、専門家に相談してみてください。一人で抱え込まず、周囲の力を借りることが大切です。
そして、焦らないでください。回復には時間がかかることもあります。でも、一歩ずつ前に進めば、必ず道は開けます。
あなたが自分らしく、無理なく働ける環境を見つけられることを、心から願っています。
コメント