「新卒で入った会社を辞めたら、もう人生終わりだ」そんな不安を抱えて、毎朝満員電車に揺られながら出社していませんか。入社してまだ数ヶ月、あるいは1年も経っていないのに、すでに限界を感じている。でも「3年は我慢しないと」「すぐ辞めたら二度と就職できない」という言葉が頭をよぎり、身動きが取れなくなっている。
結論から言います。新卒で辞めても、人生は終わりません。むしろ、自分に合わない環境で消耗し続ける方が、よほど危険です。この記事では、転職支援の現場で数百名のキャリア相談に乗ってきた私が、新卒退職に関する誤解を解き、あなたが前を向いて一歩を踏み出すための具体的な情報をお伝えします。
「新卒で辞めたら終わり」という思い込みはどこから来るのか
日本社会に根付く新卒一括採用神話
日本企業の多くは、今でも新卒一括採用を重視しています。4月に一斉入社し、研修を受け、配属される。この「横並び」のシステムが、「ここから外れたら終わり」という恐怖心を生み出しているのです。
実際、私が相談を受けた25歳の男性は、こう話していました。「大学の同期はみんな頑張っているのに、自分だけ辞めたら負け組になる気がして」。彼は毎日終電帰りで体調を崩していましたが、周囲と比較することで自分を追い込んでいました。
親世代の価値観の影響
「石の上にも三年」「一つの会社に長く勤めることが美徳」という考え方は、終身雇用が当たり前だった時代の価値観です。あなたの親御さんが「せっかく入った会社なのに」と反対するのは、自分たちの時代の成功法則を信じているからです。
しかし、今は転職が当たり前の時代。厚生労働省の調査によると、大卒者の3年以内離職率は約3割。つまり、3人に1人は新卒で入った会社を3年以内に辞めているのです。
SNSで見る「成功している同期」との比較
SNSには、充実した会社生活を送っている同期の投稿があふれています。しかしそれは、彼らの人生のほんの一部。苦労や悩みは見えません。この「見えない部分」を忘れて比較してしまうと、自分だけが取り残されている錯覚に陥ります。
実際のデータが示す「新卒退職」のリアル
3年以内離職率の推移
厚生労働省が発表している「新規学卒就職者の離職状況」を見ると、大卒者の3年以内離職率は、ここ10年ほぼ横ばいで推移しています。
2020年3月卒業者のデータでは、1年目で約11%、2年目までで約23%、3年目までで約32%が離職しています。これは決して珍しいことではなく、むしろ一般的な現象なのです。
特に、従業員数が少ない企業ほど離職率は高い傾向にあります。例えば5人未満の企業では3年以内離職率が約50%を超えています。
転職市場における第二新卒の需要
「第二新卒」という言葉をご存知でしょうか。これは、新卒で入社して3年以内に転職活動をする若手人材を指します。
実は、この第二新卒は転職市場で非常に人気があります。なぜなら、基本的なビジネスマナーは身についているものの、前職の企業文化に染まりきっていないため、企業側としては「育てやすい」と判断されるからです。
大手転職サイトのデータを見ると、第二新卒向けの求人は年々増加傾向にあります。特にIT業界、コンサルティング業界、ベンチャー企業では積極的に第二新卒を採用しています。
私が支援した23歳の女性は、新卒で入った金融機関を1年で退職。その後、Webマーケティング会社に転職し、今では前職以上の年収を得ています。彼女が評価されたのは「若さ」と「素直さ」でした。
新卒で辞めて成功した人たちの実例
ケース1:適性のミスマッチに気づいて方向転換
28歳の男性、ユウタさんの話です。彼は理系の大学を卒業後、大手メーカーの研究職に就きました。しかし入社半年で「自分は研究よりも、人と関わる仕事がしたい」と気づきます。
周囲からは「もったいない」「せめて3年は」と引き止められましたが、彼は1年で退職を決意。その後、人材紹介会社に転職し、現在はマネージャーとして活躍しています。
「あのまま我慢していたら、今の自分はいなかった。早めに決断して本当に良かった」と彼は振り返ります。
ケース2:ブラック企業から脱出して心身の健康を取り戻した
24歳の女性、アヤさんは、新卒で入った広告代理店で月100時間以上の残業を強いられていました。入社3ヶ月で体重が8キロ減り、朝起きられなくなり、ついには通勤電車で涙が止まらなくなってしまいました。
彼女は8ヶ月で退職。その後、転職エージェントを活用して、ワークライフバランスを重視する企業に転職しました。今では定時退社が基本で、趣味のヨガを楽しむ余裕ができたと言います。
「人生終わりだと思っていたけれど、終わりどころか始まりだった」という彼女の言葉が印象的でした。
ケース3:早期退職でスキルアップの時間を確保
26歳の男性、タクヤさんは、新卒で入った小売業の会社を2年で退職しました。理由は「もっと専門的なスキルを身につけたい」というもの。
退職後、プログラミングスクールに通い、半年後にはIT企業に転職。現在はエンジニアとして、前職の1.5倍の年収を得ています。
「新卒で入った会社は悪くなかったけど、自分が本当にやりたいことではなかった。早めに気づいて動けたことが良かった」と話します。
新卒で辞めることのメリットとデメリット
正直に言えば、新卒で辞めることにはメリットもデメリットもあります。両方を理解した上で、判断することが重要です。
メリット
・若さという最大の武器がある:20代前半であれば、ポテンシャル採用の対象になりやすい
・早期に軌道修正できる:自分に合わない環境で何年も過ごすよりも、早めに方向転換できる
・心身の健康を守れる:ブラック企業で消耗し続けるリスクを回避できる
・新しいスキルを学ぶ時間がある:第二新卒として転職活動をしながら、スキルアップの時間も確保できる
私が支援した方々の中で、新卒1年目で退職した人の約7割が「辞めて良かった」と答えています。特に、メンタル不調を抱えていた人ほど、早期退職が良い結果をもたらしています。
デメリット
・短期離職の説明責任が生じる:面接では必ず「なぜ辞めたのか」を聞かれる
・次の転職で慎重になられる可能性:企業によっては「またすぐ辞めるのでは」と懸念される
・収入が一時的に途絶える:退職から次の就職までの空白期間の生活費が必要
・社会人経験が浅いと見なされる:即戦力を求める企業には不利になる場合がある
ただし、これらのデメリットは「準備」と「説明の仕方」次第で十分にカバーできます。
辞める前に必ず確認すべき5つのこと
感情的な判断になっていないか
「もう無理」「今すぐ辞めたい」という感情は、誰にでもあります。しかし、その感情だけで辞めてしまうのは危険です。
まず、以下を確認してください。
・今の不満は、会社を変えれば解決するものなのか
・それとも、どの会社に行っても同じような問題が起こりそうか
・一時的なストレスなのか、構造的な問題なのか
私が相談を受けた27歳の女性は、「上司と合わない」という理由で退職を考えていました。しかし話を聞くと、上司は来月異動予定だったのです。結果的に彼女は残留し、新しい上司のもとで楽しく働いています。
生活費の準備はできているか
退職してから次の仕事が決まるまで、少なくとも3ヶ月分の生活費は確保しておきたいところです。
家賃、光熱費、食費、通信費など、最低限の固定費を計算してみてください。実家に戻れる環境があるなら、それも選択肢の一つです。
失業保険も活用できますが、自己都合退職の場合、給付まで2ヶ月以上かかることを覚えておきましょう。
転職活動の準備はできているか
在職中に転職活動を始めるのがベストですが、難しい場合もあります。その場合でも、退職前に以下の準備をしておくことをおすすめします。
・自己分析:何が得意で、何がしたいのか
・業界研究:どんな業界・職種があるのか
・職務経歴書の作成:短い期間でも、何を経験し学んだのかを言語化する
・転職エージェントへの登録:プロのアドバイスを受けられる環境を整える
退職理由を論理的に説明できるか
面接で必ず聞かれるのが「なぜ前職を辞めたのですか」という質問です。
ここでのNG回答は、前職の悪口や感情的な理由です。例えば「上司が嫌いだった」「残業が多すぎた」だけでは、面接官に良い印象を与えません。
良い回答例は、以下のような構成です。
・前職で何を学んだか
・しかし、自分が本当にやりたいことは別にあると気づいた
・だからこそ、御社の〇〇という点に魅力を感じた
このように、前向きな理由に転換することが重要です。
相談できる人はいるか
退職は一人で決めるには大きな決断です。信頼できる人に相談することで、客観的な視点が得られます。
・家族
・大学時代の友人
・転職エージェント
・キャリアカウンセラー
私自身、転職支援をしていて感じるのは、「相談相手がいる人ほど、良い転職ができている」ということです。
辞めた後のキャリア戦略
第二新卒としての転職活動の進め方
第二新卒の転職活動には、いくつかのコツがあります。
まず、転職エージェントを活用することを強くおすすめします。特に第二新卒に特化したエージェントは、短期離職者の転職実績が豊富で、面接対策もサポートしてくれます。
次に、応募書類の書き方です。職務経歴書には、短い期間でも「何を学び、何ができるようになったか」を具体的に書きましょう。
例えば、営業職なら「月間目標達成率」「新規顧客獲得数」など、数字で示せる実績があると説得力が増します。
面接では、「早期退職」という事実よりも「これから何をしたいか」という未来志向の話をすることが大切です。
スキルアップへの投資
退職後、次の仕事が決まるまでの期間を、スキルアップの時間として活用する方法もあります。
・プログラミング
・Webデザイン
・マーケティング
・語学
これらのスキルは、独学でも学べますし、オンラインスクールも充実しています。
私が支援した25歳の男性は、退職後3ヶ月間、Webマーケティングを学び、その知識を武器にベンチャー企業への転職を成功させました。「早期退職をスキルアップのチャンスに変えた」と彼は言います。
長期的なキャリアビジョンを描く
新卒で辞めることは、決してマイナスではありません。むしろ、早い段階で自分のキャリアを見つめ直すきっかけになります。
・5年後、どんな仕事をしていたいか
・どんなスキルを持っていたいか
・どんな働き方をしていたいか
これらを考えることで、次の転職先選びの軸が見えてきます。
「人生終わり」ではなく「人生の選択肢が広がる」と考える
今、あなたが抱えている不安や悩みは、とても理解できます。私自身も、転職支援の仕事を始める前は、大手企業を3年で辞めた経験があります。当時は「この先どうなるんだろう」という不安でいっぱいでした。
しかし、振り返ってみれば、その決断があったからこそ、今の自分があります。新卒で入った会社を辞めることは、人生の終わりではなく、新しい始まりです。
大切なのは、感情だけで動かず、しっかりと準備をすること。そして、自分の人生の主導権を、他人や社会の「常識」に渡さないことです。
「3年は我慢しないと」という言葉に縛られる必要はありません。自分に合わない環境で心身を壊すくらいなら、勇気を持って一歩を踏み出す方が、よほど賢明です。
ただし、辞めることがゴールではありません。辞めた後、どう動くかが重要です。この記事で紹介した準備やポイントを参考に、あなた自身のキャリアを前向きに考えてみてください。
転職市場は、あなたが思っているよりも広く、可能性に満ちています。第二新卒という立場を活かして、本当に自分がやりたい仕事、自分に合った環境を見つけることは、十分に可能です。
「新卒で辞めたら人生終わり」は、間違いです。あなたの人生は、これから始まります。
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